大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所姫路支部 昭和41年(わ)426号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(強姦致傷の訴因中、致傷の点を認めない理由)

検察官は本件訴因として、判示強姦未遂の際被告人は判示の如き暴行により被害者柳南美江に対し加療約五日間を要する左下腿擦過傷、左側大陰唇内側皮膚粘膜充血等の傷害を負わせたものとして強姦致傷罪の成立を主張しているのでこの点について判断するに、医師山崎昭子作成の昭和四一年八月二八日付柳南美江に対する診断書(検甲第8号)には右検察官主張の創傷の部位、程度に対応する記載があり、又前掲各証拠によると、被害者の蒙つた右各損傷はいずれも被告人の判示強姦未遂の行為もしくはこれに随伴して生じたものであることを一応認めることができる。しかしながら、柳南美江の告訴調書(検甲第2号)および同女の当公判廷における証言を総合すると、前記各損傷のうち、左側大陰唇のそれは、判示強姦未遂に際して被告人の手指を陰部に挿入された結果生じた皮膚充血と認められるにしても、被害当夜陰部に少し痛覚が残つたといつた程度のもの、又左下腿部のそれは、同女が本件被害にあつた翌日被害事実を告訴するため所轄警察官駐在所に出頭した際取調官にどこか傷はないかといわれて身体を調べた結果偶々発見されるに至つたものに過ぎず、しかも同女自身それまで何らの痛みも自覚していなかつたもので、いずれも右取調終了後医師の診察、治療を必要とするとは考えていなかつたのに、取調官の勧めもあり、又同女の夫に対して姦淫されていない証を立てんがため、前記被害の翌日午後七時頃姫路市八家にある山崎産婦人科医の診察を受けたが、その際同女自身医師に対して全然痛みを訴えておらず、又同医師も軽微な創傷として手当の必要を認めず、格別治療手段も施さなかつたことが認められる。以上の事実に徴すれば、右損傷はいずれも極く軽微で、被害者の健康状態を不良にしたり同女の日常生活に支障を及ぼしたものとは認められないから刑法上傷害に該るものとは認め難い。他に本件訴因中致傷の点を認めるに足りる証拠はないから、結局本件強姦致傷の訴因中致傷の点はその証明がないことに帰する。そこで本件は強姦未遂罪と認したものである。(三上修 内匠和彦 藤田清臣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!